2007年10月30日

苔のむすまで

『苔のむすまで』 杉本博司
「私が写真という装置を使って示そうとしてきたものは、人間の記憶の古層である」

杉本博司は、1974年からNYより写真を中心とする作品を発表しているアーティストである。
私が初めて彼を知ったのは、2年前森美術館で開かれていた展覧会で、幸運なことに、そのあとも何度か作品に触れる機会を得てきた。

しかしこの本を読んで、彼の作品に対する見方が変わった。
まず、彼は単なる写真家であると思っていた。冒頭に引用した文章の通り、杉本博司の撮る写真には歴史や時間というメッセージが込められていて、写真家と言うよりは芸術家と呼ぶ方が相応しいと、今ならば思う。

たとえば、表紙に使われているNYワールド・トレード・センターのピントのずれた写真には、この世にはないはずの遠い場所を覗こうという思いが込められている。以前私も訪れたことのある直島の護王神社には後白河天皇に敗れた崇徳院との縁があって、杉本博司は再建に携わるに当たってそのことを重視したようだ。

そんな彼の歴史に対するまなざしが、この本からは伝わってくる。
次からはきっと、彼の作品が違ったものに見えるだろう。

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